ハイパフォーマンスコンピュータ 2020.8.19

1.はじめに
シミュレーション技術は、計算を実行するハードと計算を実現するソフトの両方がなければ成り立たない。ハードとしてハイパフォーマンスコンピュータ(スーパーコンピュータ)の活用が国の主導で実施されている。スーパーコンピュータ「富岳」開発の目的、取り組む課題について述べる。
2.目的
現代社会が抱えるさまざまな課題と、科学分野における重要な問題の解決に貢献することである。
3.取り組むべき課題
取り組むべき課題は、以下の3つの観点から検討された。
・社会的・国家的にみて、取り組む意義が高いか
・世界をリードするような成果が期待されるか
・「富岳」の性能を有効に活用できるか
その結果、以下の9つの重点課題が決定した。
健康長寿社会の実現
1.生体分子システムの機能制御による革新的創薬基盤の構築
2.個別化・予防医療を支援する統合計算生命科学
防災・環境問題
3.地震・津波による複合災害の統合的予測システムの構築
4.観測ビッグデータを活用した気象と地球環境の予測の高度化
エネルギー問題
5.エネルギーの高効率な創出、変換・貯蔵、利用の新規基盤技術の開発
6.革新的クリーンエネルギーシステムの実用化
産業競争力の強化
7.次世代の産業を支える新機能デバイス・高性能材料の創成
8.近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発
基礎科学の発展
9.宇宙の基本法則と進化の解明
4.まとめ
近年、観測技術や分析手法の進歩により、従来とは比べものにならないほど大量のデータが得られるようになってきた。これらのビッグデータを解析し、そこから有用な情報を得るには、性能の高いスパコンが必要になる。こうした大規模シミュレーションやビッグデータ解析を、「富岳」の運用開始後、速やかに開始できるようにするため、アプリケーション開発とシステム開発が協調的に進められている。このコンセプトを「コデザイン」と呼ぶ。システムとのコデザインにより、これらを「富岳」に適した形で開発すれば、そのノウハウは「富岳」クラスのスパコンが普及する際に、大いに役立つと考えられる。
以上