固有振動数と危険回転速度 2020.6.12

1.はじめに
物体の固有振動数と回転周波数が一致するときの回転速度を危険回転速度という。それぞれについて述べる。
2.「固有振動数」の概要
物体、またはその集合体を振動させると、いくつかの特定の振動数の振動のみが発生する。これらを固有振動といい、その振動数を固有振動数という。固有振動数は、振動する物体の形状・構造、それを形づくっている物質の密度、弾性係数、物体の支持方法等によって定まる。
3.「危険速度」の概要
危険速度とは、回転系の軸のたわみ方向の曲げの固有振動数と回転周波数が一致するときの回転速度である。危険速度においては、回転軸の振れまわりが大きくなり、故障や異常振動など不具合の原因となりやすい。そのため、危険速度近辺での定常的な運転を避けるようにしなければならない。また、危険速度を通過しなければならない場合は、短時間で通過させる必要がある。
下記は、多自由度振動系の固有振動数を計算で求める手法である。最近は有限要素解析ソフトが普及したので、あまり手計算で固有振動数を求める機会が減ったが、計算機の無い昔、これらは貴重な方法であった。
4.「エネルギー法(別名レイリー法)」(別名レーリーの方法)
多自由度連成振動系の振動モードの形を仮定し、これに従って振動が生じたときの運動エネルギーとポテンシャルエネルギーを固有振動数の関数の形で導き、これを解くことで固有振動数を求める方法。一様梁のように振動モード形が想像しやすいものでは、かなり正確な固有振動数を導くことが出来る。従って梁の曲げ振動解析などに用いられる。
5.「ダンカレー法」(別名ダンカレーの実験式)
多自由度連成振動系の基本固有振動数の近似値を、振動数方程式のうち高次振動数を与える項を無視することで求める方法で、多数の円盤をつけた回転軸の危険速度の算出などで用いる。全体の基本固有振動数の二乗の逆数を、i番目の円盤だけ取り付けた軸の固有振動数の二乗の逆数の総和として求める方法。これは基本固有振動数しか求められないという欠点があるが、計算が体系的なので比較的容易。
6.「ホルツァ法」
軸のねじれ振動において、系の復元モーメントが内力であり常につりあっていることに着目し、固有振動数の値を仮定して系全体が調和振動している状態でトルクの釣り合い式を導き、逐次計算によりトルクの総和を求め、これが0となるよう固有振動数の値を逐次修正していく方法。これは適切な初期固有振動数を設定するには経験を要するが、固有振動数とモード形が同時に求められる点が便利で、多数の円盤をつけた回転軸のねじれ振動の固有振動数の算出などで用いる。
以上