EUの法令(法律・規制類)体系 2022.1.15

1.はじめに
EUとは、欧州連合条約をはじめとするEUの基本条約によって設立、運営される国際機関である。EUでは基本条約によって加盟国の主権の一部がEUへ移譲され、主権が移譲された政策分野においては、加盟国に代わってEUが権限を行使する。そのためEUの法体系は、国際法とも、また加盟国の国内法とも異なる独自の体系となっている。そのEU法は、一次法(Primary Legislation)、二次法(Secondary Legislation)、判例(Case-Law)の3種類から構成されている。それぞれについて述べる。
2.一次法(条約)
一次法とは、EUの設立条約や改正条約にあたる基本条約を指している。加盟国政府間による直接交渉によって内容が合意されるもので、日本で言えば憲法に相当する。
3.二次法(共同体立法)
二次法とは、一次法(条約)を根拠に制定され、EU域内で直接・間接的に企業や個人を規制する法令である。一般に企業が守らなければならない規制類は、この二次法になる。これらは大きく分けて、規則(Regulation)、指令(Directive)、決定(Decision)、勧告(Recommendation)、意見(Opinion)の5種類がある。条約に法的な根拠を持ち、EU法あるいは派生法と呼ばれている。詳細は以下の通り。
3.1.規則(Regulation)
EU加盟国の法令を統一するために制定される法令で、REACH規則などが該当する。EU域内の国、企業等を直接規制するものであって、EU加盟各国の国内法よりも優先して適用されなければならない。簡単に言えば、EU域内で統一されたルールが適用されるため、EU加盟各国で同じ規制内容が適用される状態になるということ。
3.2.指令(Directive)
EU加盟国間での規制内容の統一(調整)を目的とする法令で、WEEE指令やRoHS指令などが該当する。原則として通常はEU加盟国へは直接適用されず、国内法への置き換えが必要なので、EU加盟国が「指令」を指令で定められた期日までに国内法として制定・改正する必要がある。「指令」は、国内法で規定されたものがルール(規制内容)になるが、国内法への転換の際には一定の裁量権が与えられているので、各国間で法令が異なる場合もある。
3.3.決定(Decision)
EU加盟国内の特定の国、企業、個人などに限定して宛てられる法令で、直接拘束される。法令を遵守する必要があるのは、その特定された国や企業などのみである。
3.4.勧告(Recommendation)
EU加盟国や企業などに行為や行動を期待することを欧州委員会が表明するもの。法的拘束力、強制力はないものの事実上、EU加盟国内での法令制定・改正などを促すものとされている。
3.5.意見(Opinion)
特定のテーマについて欧州委員会が意思を表明するもので、法的拘束力、強制力はない。「見解」と呼ばれることもある。これらの法律は、欧州連合理事会、欧州議会、欧州委員会の3つの主要機関が決定する。
4.判例
EU司法裁判所の判例である。ただしEU司法裁判所は、先例には拘束されないとしている。
以上