HAZOPE 2021.4.4

2021.3.27

1.はじめに

1960年代に英国ICI社が開発した手法で、ハザード操作性解析(Hazard and Operability Study)のことを指す。主に化学プラントの設計・運転においてプラントの危険性を明らかにし、必要な対策を講じるための手法である。日本においても2000年頃からHAZOPEの有効性が認識され始め、現在では石油精製、石油化学、一般化学など多くの化学産業においてHAZOPEを導入する企業が増えてきている。

2. 基本思想

プラントは設計意図通りの設計、運転操作が実施されていれば基本的には安全であり、事故は設計意図から逸脱(deviation)つまり「ずれ」が生じることにより発生するという考えに基づいている。そこで「ずれ」の原因を明らかにし、ずれの発生防止、ずれが発生したときの影響や緩和、対策を講じることでプラントの安全は確保されるという基本思想である。

3.実施手順

チームリーダーの選任、検討資料の準備、チームの編成、検討作業の準に作業を行う。

3-1. チームリーダーの選任

HAZOP手法に詳しく、経験豊富なメンバーをチームのリーダーに選出する。

3-2. 検討資料の準備

プロセスフロー図(P&ID)、物質収支、熱収支、機器仕様、運転手順、運転限界値、インターロック設定条件などの情報を準備する。

3-3. チームの編成

オペレーター、プロセスエンジニア、機械設計エンジニア、電気計装エンジニア、保全関係者、などの異なる技術者から編成する。属性の異なるメンバーを集めることで、さまざまな視点から抜けなく確認することができる。

3-4. 検討作業

潜在危険性の特定にガイドワード(案内語)とプロセス運転条件を組み合わせ、通常状態との「ずれ」に着目する。

ガイドワードは、「no無し」「less量的減少」「more量的増加」「reverse逆」「other than置換」「as well as質的増加」「part of質的減少」「sooner than時間的早まり」「later than 時間的遅れ」「longer than 長時間」「shorter than 短時間」がある。

パラメータは流量、圧力、温度、液面、組成、分離、反応等があるが、流量の「ずれ」を例えると、流れ無し、流量減少、流量増加、逆流した際、最終的にはどうなるか、潜在的な危険性を想定する。

原因、影響、結果、現状の安全対策、改善策、検討課題等をワークシートに記載し記録として残す。

工程由来の火災、爆発、漏洩、健康、環境影響だけでなく、外部火災、停電、地震、などの外部要因や事象も想定が必要である。

4.まとめ

リスクは必ず存在する。予防策、緩和策を実施することで戦略的にリスクに対応することが重要である。                                     

補足

HAZOPEは網羅的な分析ができる優れた手法だが、対象のプロセスは基本的に妥当であるという暗黙の前提に基づいている。世の中には時々とんでもない事が起きるので、HAZOPEだけでは、カバーしきれない事態がある。What-IfとHAZOPEを組み合わせて、不測の事態を含む、広範囲な分析を行う対策が必要な場合もある。

What-If解析は、プロセスの安全対策の妥当性、潜在危険の抽出に使われる。デュポンが最初に提唱した解析方法である。「もし、このポンプが停止したならば」「もし、この流量計が故障したならば」などのように設計者や運転員が日常行なっている発想やブレーンストリーミングの思考形態をそのまま解析に活用する。

以上