人口構造 2020.8.21

1.はじめに
国内の総人口は、2004年ごろをピークに減少に転じ、老齢人口の増加と生産年齢人口の減少という「人口構造の変化」が起こっている。この変化により、日本社会は数々の課題が発生している。製造業における課題、判断根拠、対処方法を述べる。
2.課題
人口構造の変化は製造業にも影響を及ぼす。他の業種に比べても製造業の減少割合は大きく、就業人口は減少している。また日本の生産年齢人口の減少状態において企業は、働く人を求めて海外に進出するので、国内における製造業は衰退してしまう。つまり産業の空洞化状態に陥ってしまう。さらに技術、技能を次の世代に伝えようにも、それを受け継ぐ人材が少なければ技術、技能の伝承が難しい。これらが課題といえる。
3.判断根拠
製造業界は「きつい、汚い、危険」の総称である「3K」のイメージを払拭しきれておらず、ライン作業などのルーティン作業への忌避感もあわさり、求職者に人気の業界とは言えない。また海外に工場が移転し、国内の工場閉鎖や製造業の就業人口減少は白書等で公開されている。例えば1992年の製造業就業者数1569万で、2019年だと1063万人つまり27年間で3割減少している。
4.対処方法
たとえ対策を講じたとしても製造業における就業人口は将来、減少することはあっても増加する可能性は少ないと考える。そうなれば人口が減っていく前提で社会およびビジネスモデルを構築する発想転換をするしかない。減っても世界で上から10位の人口大国である。またイギリスやフランスの2倍の人口である。製造業の就業人口は減ったとしても、効率化を推し進め、一人あたりの生産性を高め、製造業全体の利益を上げる取り組みが大切である。以下の対処方法も就業人口が減ることを前提にした対策である。
4.1) 産業用ロボットの活用
過去の産業用ロボットは対応できる業務領域が狭く大型であったことから、担当作業が明確に分けられていて、大きな工場を有している大企業しか活用できていなかった。しかし、技術の進歩にともない、ロボットの対応できる業務の拡大と小型化、低コスト化が進み、中小企業でも活用が可能となった。
4.2) IT技術の活用
情報処理技術も普及し、ロボットの稼働データを、インターネットを通じて蓄積、管理することで、工場全体の稼働状況を最適化できる「スマートファクトリー」や「IoT」化を実現する企業も現れている。これらの技術を積極的に取り入れ、生産設備の自動化を加速させる必要がある。産業用ロボットやIT技術活用がもたらす代表的なメリットは「生産性向上」だが、副次的なメリットとして「育成コストの低下」や「過酷労働からの開放」なども挙げられる。これまで熟練者に依存していた作業をロボットに任せられれば、属人性の排除に加え、身体を酷使する作業を減らして、ロボットの点検など低負荷の作業に置き換えられる。
4.3) 高齢の技術者、熟練者の活用
過去の成功体験は活かしつつも、縛られず、常に新しい技術を取得できる一部の高齢者や熟練者は別として、その他の多くの高齢者は、いくら世間で「高齢者の活用」が重要だと言っても変化のスピードが早い製造業にはついていけない。IT技術をより易しく、誰にでも使い易くするアプローチ(扱いが簡単なデバイス、ツールの開発)が必要と考える。
4.4)外国籍や女性など幅広い人材の活用
製造業では、長時間立ちっぱなし、重い製品を何度も持ち運ぶといった過酷労働がともなうこともあるため、その環境に耐えうる人しか従事することができなかった。しかし産業用ロボットやIT技術を活用することで過酷作業をなくし、ロボットの点検など低負荷の作業を創出できれば、女性や外国人労働者、高齢者でも雇用できる。
5.まとめ
人手不足は社会的な課題と深く関係しているため、一朝一夕で解決することはできない。また製造業だけの問題ではない。発想転換をして、人口が減っていく前提でビジネスモデルを構築するしかないと考える。製造業においては、効果的な対策を講じた企業だけが生き残れる厳しい業界であると自覚する必要がある。
以上