疲労破壊 2020.8.20

1.はじめに
一般に、機械製品が壊れる原因の8割近くが疲労破壊と言われる。「金属疲労」という言葉が一般にも浸透していることから分かるように、疲労破壊事故の社会的認識や影響力は大きくなっている。疲労破壊の具体例、対策を述べる。
2.疲労破壊の具体例
2.1)御巣鷹山に墜落したジャンボ機墜落事故
客室内の圧力を一定に保つための圧力隔壁の上半分と下半分の接合部が疲労破壊した。離着陸による繰り返し圧力サイクルに耐えられなかったからである。これにより機体内の空気が勢いよく抜け、補助エンジンや、油圧配管、垂直尾翼まで吹き飛ばした。こうして機体が制御不能に陥って墜落した。
2.2)自動車のタイヤハブの破断事故
ホイールを締結していたハブのフランジ部が根元から円周状に疲労破壊して破断し、タイヤがハブごと脱落した。
2.3)ジェットコースターの脱輪事故
車軸の圧入部が緩み、車軸を車体に固定していたねじ部に想定外の繰り返し曲げ力が作用した。これにより疲労破壊して折損し、車輪ブロックが脱落して脱輪した。
3.対策・まとめ
疲労破壊を防止する対策として、単に部材の強度を上げたりして耐久性をもたせれば良いというものではない。これら事故の原因も設計要因の他、保守・点検作業の問題などさまざまな要因を含んでおり、疲労破壊事故防止には機械設計や材料強度の知識だけではなく材料全般、生産技術や保全方法などを含む広範囲な知識と経験が要求される。しかし、団塊の世代と言われる世代の退職もあり、これに応えられる経験豊富な技術者は少なくなりつつある。また、開発期間の短縮や、技術や技能の伝承も不十分な状況にある。
一方で、今後、ますます先鋭化する製品開発において、疲労強度に関する知識や技術は他社製品と差異化する1つの手法として欠かせないものとなっている。そのため、疲労強度設計の難易度は高まっている。自動車も飛行機も船舶も産業機器も医療機器も、強度を担保する製品は全て、低燃費や省エネ、高速化などのために軽量化やサイズダウンが急務となっている。さらに、コストダウンのニーズもある。これまで通りの設計では差を付けられないため、ギリギリを狙う「限界設計」が必要である。このためには、いい加減な疲労強度の理解では高い信頼性を維持できない。
企業は一朝一夕に信頼性や耐久性を獲得してきたわけではない。長年積み上げ続けて、ようやく獲得できるのが信頼性や耐久性が高いという評価である。最新のデジタル技術(CAE、シュミレーション)を取り入れつつ、製品開発の基本としての信頼性と耐久性を考慮した疲労強度設計を今後も続けていく必要があると考える。
以上