PDM 2020.8.13

1.はじめに
どんな製品にも、いつかは売れなくなる時がくる。新しい技術が生まれてより高品質・低価格な製品が出てくる、そもそもニーズがなくなるなど、理由はさまざまである。その製品が開発され、売れなくなるまでの経過を、「製品ライフサイクル」と言いう。近年、この製品ライフサイクルが、短くなってきていると言われている。製品ライフサイクルの短縮化は、一つの製品で大きな利益を出すことが難しくなっていることを意味する。企業は、短くなる製品ライフサイクルのなかで、できるだけ利益を出し、製品開発のコストはできるだけ下げなくてはならない。それを実現するために今注目されているのがPDMなどのデータ管理システムである。PDMの概要、機能、目的、課題、PLMとの違いについて述べる。
2.PDMの概要
PDMとは、「Product Data Management」の略で、製品データや設計技術情報の一元管理を実現するシステムである。
3.PDMの機能
おおまかに下記の4つの機能がある。
(3.1)データ管理機能
PDMを利用することで、設計に関わる、「CADデータ管理」「図面管理」「ドキュメント管理」「部品表(BOM)管理」「設計変更管理」が可能になる。また、各データ同士を紐付けて管理することも可能である。例えば、CADデータに画像データや解析の結果を紐付ける、製品データに部品データを紐付ける、といった管理が考えられる。
(3.2)ワークフロー管理機能
設計部門の中で発生するワークフローを可視化し、システム上で申請や承認をすることができる。例えば、設計変更の申請・承認などが行える。
(3.3)検索機能
キーワードでファイルや図面の検索ができる。システムによっては、ファイル名の他、ファイル内の文言での検索や、プロパティ情報を基にした検索も可能である。
(3.4)セキュリティ機能
他部門、他チームには共有をしたくないという情報があれば、そのデータについてアクセスを制限することが可能である。これにより、重要な図面が勝手に変更されてしまった、という問題を防ぐことができる。
4.PDMの目的
設計の現場ではCAD(Computer Aided Design)の使用が一般的となっており、CAM(Computer Aided Manufacturing)やCAE(Computer Aided Engineering)など、後工程のコンピュータ化も進んでいる。しかし、製品に関する情報はCADデータ以外にも多岐に渡る。そこでPDMを利用することで、CADデータ以外の設計情報や生産情報を一元管理することができる。PDMは、工程や部門ごとに閉じられた管理ではなく、製品のライフサイクル全体の最適化を目的としている。
5.PDMの課題
(5.1)社員の教育コスト
PDMは複数の業務プロセスを一元管理できるシステムだが、仕様や使い勝手が複雑になりがちである。よってPDMの導入には、社員の教育コストがかかる。システムへの理解度が足りないと導入の恩恵を得にくい。本格的に導入する前に社員のPDMに対する理解度を高める必要がある。
(5.2)投資対効果
投資対効果がわかりにくいというデメリットもある。PDMは全ての製品ライフサイクルにおける製品情報を一元管理するものであり、管理の対象範囲が広いので定量的な目標を設定しにくい。
また、社員がシステムに慣れてから効果が出てくるという特性上、製品導入の効果を明確にするのは困難である。
6.PDMとPLMの違い
PDMは製品設計時に作成されるCADデータやBOMの情報を一元的に管理するものであり、設計作業の効率化が目的とされている。一方PLMは、Product Life cycle Managementの略で、設計に関わらず製品のライフサイクル全てに関わる情報を管理する。これにより、設計を含めた製品開発業務の効率化を目的としている。しかし、PDMの中には設計に関わるデータ以外にも対応したシステムなどがあり、線引きは明確ではない。
以上