失敗学 2020.7.18 

1.はじめに

 失敗学では「原因究明」「失敗防止」「知識配布」が核となる。既存製品に不具合が発生し、自分が原因究明と再発防止の責任者であるとして次の設問に答える。

・製品不具合の直接原因の例を1つ挙げ、それに至る根本原因として考えられるものを多面的に述べる。

・上記で述べた根本原因のうち、重要と考えるものを1つ挙げ再発防止をはかるための提案を示す。

・提案だけでは防止しきれないリスク、あるいは限界について説明する。

2.装置からのオイル漏れの根本原因

 軸受に潤滑油を使用している装置が、納入後短期間でオイル漏れが発生した。漏れる可能性がある場所として「オイルシールのリップ部」「オイルシール外輪取り付け部」「オイルシールホルダーのガスケット部」等あるが、今回は「シールリップ部」に絞り、この根本原因について述べる。

2.1オイルシール・リップ部破損、異常摩耗

 装置組み込み時にシールリップ部を傷つけた場合にオイルが漏れる。また軸の表面粗さが規定範囲を超えている場合もシールリップ部が異常摩耗し、オイルが漏れる。

2.2軸の異常摩耗

 軸表面の硬さが許容値に入っていない場合、軸表面が異常摩耗してオイルが漏れる。

2.3異物噛み込み

 大気側や流体側に異物がある場合、シールリップ部に異物が噛み込み、オイルが漏れる。

3.再発防止

 上記の根本原因の中から「異物噛み込み」に絞って再発防止策を述べる。大気側からの異物混入を防止するためにダストリップ付きのオイルシールを選定した。だたし、摺動面が増えると摩擦熱も上昇し、オイルシール自体の温度が上がりやすい。オイルシール自体が耐熱性のある材質(FKM)を選定する。内部(オイル内)からの異物を防止するには、オイル溜まり内の洗浄および定期的なオイル交換が挙げられる。

4.提案だけでは防止しきれないリスク

 異物防止の根本対策は、異物を発生させないことである。しかし機械を据え付ける場所によっては大気側に粉塵が存在する工場もある。粉塵雰囲気であってもリップシール部に異物、粉塵が直接入り込まない対策を行った。また間違って番手の異なるオイルを給油する、オイル量が適切でない、などは機械にとって別のトラブルを生じ兼ねない。これは機械メーカーだけでは防止しきれないリスクといえる。ユーザー側でのオイル管理、メンテナンス、予防保全を実施することが重要である。

以上