信頼性設計 2020.6.30

1.はじめに
信頼性設計とは何か、その目指しているところを記し、信頼性設計に用いられる手法とその考え方について述べる。
2.信頼性設計の概要
信頼性設計とは、装置やシステムまたはそれらを構成する要素や部品が使用開始から設計寿命までのライフサイクル期間を通して、ユーザーが要求する機能を満足するために、故障や性能の劣化が発生しないように考慮して設計する手法である。
3.信頼性設計の目指すところ
信頼性設計の目指すところは、製品のライフサイクルで以下の項目に対応することである。
・故障が発生しないようにする。
・故障が発生しても機能が維持できるようにする。
・故障が発生してもただちに補修できるようにする。
以上の項目を満足するだけでなく、利用者に最大限の製品機能やサービスを提供するとともに、資源利用効率を向上させて地球環境を保全し、持続可能な生産活動を実現することも重要である。
4.信頼性設計の手法
信頼性設計の手法には、FMEA、FTA、信頼性度予測、累計ハザード法、フェイルセーフ設計、フールプルーフ設計、冗長性設計、設計審査などがある。ここでは、これらの手法の中でも特に広く利用されている、FMEAとFTAについて記述する。
5.考え方例:FMEA(故障モードとその影響の解析)
装置やシステム(以下、製品と呼ぶ)を構成する要素毎に発生する可能性のある故障モードを予測し、その故障によって製品の性能にどのように影響があるのかを表を用いて解析する手法である。これによって、重大な製品の故障につながる要因を抽出し、危険度や重要度の高い故障に結びつく原因や問題点を設計段階で解決させることができる。解析は以下に手順で行う。また、表1に解析に用いるワークシートの例を示す。
①:設計仕様書や図面により、対象となる製品と構成部品の構造、機能、使用条件や環境などを確認する。また、解析の対象とする要素を決定する。
②:①で決定した要素の故障モードを過去の故障事例など参照して抽出する。
③:各故障モードの推定原因を検討する。
④:故障モードが、製品に及ぼす影響を評価する。
⑤:危険度を評価する。一般的に、次の式で評価する。危険度=影響度×発生頻度×検出度
⑥:危険度の高い順に対応表を検討する。
表1:FMEAワークシート

6.考え方例:FTA(故障の木解析)
製品において発生してはならない重大な事故やトラブルを頂上事象として設定し、その発生に影響する要因を末端の故障事象まで展開する手法である。事象間の因果関係をANDやORの理論記号により展開していくことで、最下位の基本事象の発生確率が与えられれば頂上事象の発生確率を定量的に解析できる。解析は以下の手順で行う。また、図2に解析に用いる図の例を示す。
①:解析に対象範囲を決めて、その製品全体に影響を及ぼす重大な故障として頂上事象を設定する。
②:頂上事象が発生する関連要因を検討して、上位と下位の要因を理論記号で結んで故障の木図を作成する。これ以上発展しない最下位の事象を基本事象といい、そこまで展開を継続して実施する。
③:基本事象の発生確率を求め、頂上事象の発生確率を計算する。
④:基本事象の頂上事象への影響度を評価して、効果的な改善の対応策を検討する。
図2:FTA例

以上