機械の安全設計 2020.6.14

1.はじめに
機械の潜在する危険源あるいは作業者の不注意・操作ミス等に起因する事故が起こらないように、あるいは事故が起きても被害が最小になるような「機械の安全設計」に対する基本的な考え方を3つ挙げ、それぞれについて具体例を挙げて説明する。
2.機械の安全設計に対する基本的な考え方
国際安全規格(ISO12100)では、リスク低減のための方法論として包括的なリスク低減戦略が述べられている。これは3ステップメソッドと呼ばれており、
1.本質的安全設計によるリスクの低減
2.安全防護によるリスクの低減
3.使用上の情報によるリスクの低減という順番で行うことが明記されている。
本質安全設計のポイントは、起こったことへの対応=「対策」ではなく、起こりえる事への対応、つまり「方策」であるといえる。
3.本質的安全設計によるリスクの低減
本質的安全設計とは、安全を設計の段階から考慮することであり、最も本質的な安全の確保の方法である。それには、大きく二つの考え方がある。危険源が存在しないように設計する、または危険源が存在してもそれによる危害の度合が小さくなるように設計することである。具体的には、設備の「フェイルセーフ化」と「フールプルーフ化」が必要である。
3-1.フェイルセーフ
フェイルセーフは、装置やシステムにおいて故障や誤動作によるトラブルが発生することをあらかじめ想定し、起こった際には致命的な事故や損害につながらないように設計するという考え方である。これは「装置やシステムは必ず故障する、ユーザーは誤動作をするものだ」ということを大前提にした設計思想である。身近な例を挙げると、踏切遮断機は停電や故障した場合でも、重力により自ら遮断機竿が降りてくる機構により踏切内への進入を防止することができる。また、転倒すると自動的に消火する石油ストーブなどがある。
3-2.フールプルーフ
フールプルーフは、人間が誤って不適切な操作を行っても危険を生じない、あるいは、正常な動作を妨害されないようにすることである。そのために、さまざまな状況でどのような誤りを犯す可能性があるかを考えることが必要となる。“安全インターロック”はこの特性を現実するためのものであると考えられる。身近な例を挙げると、正しい向きにしか入らない電池ボックス、ドアを閉めないと作動しない電子レンジ、蓋を開けると自動的に止まる脱水機などがある。ユーザーは使い方を理解していない状態で操作し、熟知している場合でも集中力が低下すれば操作を誤ってしまう。そういった場合でも安全性が確保できるように事前に対策を実施することが重要である。
4.安全防護によるリスク低減
回転する機械に人が巻き込まれないように柵を設けて人が機械に近づくかないようにする、回転部に直接接触しないよう安全カバーを施工するなどの危険を回避する方法がとられる。
5.使用上の情報によるリスクの低減
上記の方策を実施して低減されなかった「残留リスク」に対して、使用上の情報として、「標識・警告表示」を機械に表示する。また「取扱説明書」を提供配布し、リスクを開示する必要がある。
6.まとめ
安全を重視した設計は、装置の使いやすさとトレードオフの関係にある。装置を設計する際には、安全に対する重要性を常に意識しながら、使う人の立場で、使い勝手の良い装置設計を心がける必要がある。また機器の設計だけでなく、マニュアルの作成や試運転などの際にも同様な配慮が必要である。
以上