品質工学・ロバストデザイン・タグチメソッド・パラメータ設計 2020.6.10

1.はじめに

 ロバストとは、「頑強な」、または「頑丈な」という意味である。ロバストデザインとは、製造時における品質のばらつきや、使用環境による変動(ノイズ・誤差因子)に対して影響を受けにくい、つまり機能の乱れが小さい設計を行うことである。

 そして機能のばらつきが小さく安定性の高い製品を、開発段階でつくり込んでしまう設計がタグチメソッドである。タグチメソッドは品質工学における最適設計という観点で考えられ、発達してきた手法である。パラメータ設計は、因子を直交表にわりつけて、SN比を求めばらつきが最小になる設計条件(制御因子と呼ぶ)を求める実験を総称した手法である。

2.期待効果

 種々の誤差に対して信頼性の高い設計、手戻りの回避、市場クレームの未然予防、誤差の合理的な管理等で製造コストを下げられる、設計期間の短縮などの効果が期待され、「ものづくり革新」のための重要な手法と位置づけることができる。

3.設計手順

1・目的機能を設定し、基本機能を明確にする

2・システムの入力(信号因子)と出力(特性値)の関係性で理想機能として定義する

3・理想機能を実現するために直交表を使って効率よく実験を行う

4・SN比と感度でそれぞれの制御因子の効果の大きさを把握する

5・要因効果図から最適条件と比較条件を決める

6・それぞれの工程平均値を求めて改善の大きさを予測する

7・最後に再現実験を行って最適条件の利得の再現性を検証する

4.直交表

 与えられた複数因子の全水準を組み合わせなくても、各因子の効果が独立して評価できる組み合わせの表である。直交表には、L 4、 L 8、 L 9、 L 16、 L 27、 L 36などがあるが、この中で小さな組み合わせは実験としての信頼性が低く、18通りより大きくなると実験が失敗した時の損害が大きいので実験の規模と実験の信頼性を考慮し、品質工学では L 18を標準形としている。

5. SN

 有効な部分を信号(S)の効果、無効な部分をノイズまたは誤差(N)の効果として、この比を SN 比とした。つまり有効な効果/無効なノイズである。技術の良し悪しを評価するための新しいものさしといえる。

6.CAEへのロバスト設計の導入

 シミュレーションではあらゆる誤差因子(ノイズ)が盛り込める。誤差因子を実験的にすべて再現するのは困難であったが、シミュレーションが適用できる場合には仮想実験ができる。こうしてCAEとロバスト設計が融合してロバスト化を実現させた例が蓄積されている。

7.まとめ

 基本機能をどのように定義し、それらをどう効率よく改善していくかが、パラメータ設計の肝になる。設計者は目的機能を実現するために、基本機能(理想機能)を明確にし、そのために何をすればよいのか、どういう特性で測ればそれが分かるのかをよく考えなければならない。

以上