見直されたFMEA 2020.5.25

はじめに
実際にものをつくっている人たちが「トラブルを未然に防ぐ道具」として使う開発ツールがFMEA (Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)である。FMEAはシステムを構成する部品に故障が発生した場合、そのシステムにどの程度の影響が及ぶかを解析する手法で、これにより各故障モードの致命度を明らかにし、対策の優先順位を相対的に判断できるようにする。
ただ、FMEAは立派な「使える」ツールであるのにもかかわらず、運用している企業は以前に比べて減っていた。理由はさまざまだが、運用している間に複雑にしてしまった、形骸化した、指導方法が適切でなかった等が考えられる。
見直されたきっかけ
2009年に米国発で自動車メーカーの大規模リコール発生したが、大手自動車メーカーは独自のFMEAを使い、この問題に対処した。それ以降やはりFMEAは重要だという認識が日本企業の間に広まった。
手順
故障の名前を書き出し、それが新しく出す製品にどのように生かされているかを見るのがFMEAである。過去のトラブルの解決策を次に出す製品にしっかり生かせているか否かをチェックするのがFMEAの本来の目的である。
[1] 部品に分ける
[2]過去のトラブル(故障モード)を持ってくる
[3]それがどのような原因かを分析する
[4]故障の影響(結果)を書く
[5]発生頻度や影響度合い、危険度合いなどを点数で評価する
[6]最後に技術者で議論して設計的結論と判断をまとめる。
[5]までが過去の評価で、次に新たに市場に出す製品の設計をどうするかを決めるのが[6]である。特に[6]の1人ではなく関係者全員で議論する、という点が大事である。
課題
ここまではFMEAの基本で以前ならこれで良かった。ところが過去のトラブルにはなかった「想定外のトラブル」が増え対処できなくなった。今後は想定外のトラブルを想定しなければならない。ところがトラブルを想像できない技術者は多い。実際に製品が使われる場所とは異なる、明るくて静かで快適な設計室のような場所で、ユーザーの目線になれと言っても難しいのである。
対処
ブレーンストーミングやTRIZなどの、ツールを使うのも手だが、経験していないトラブルを想像する新しい手法を模索する時期にきていると思われる。
まとめ
日本企業の品質の高さは日本人の几帳面さと、「あうんの呼吸」で支えられた部分もある。ところが設計者が想定していない使用方法など、想定外のトラブルに直面している。つまり今までの手法では対処できない場面がある。今一度FMEAを見直し、さらに発展させる時期に来ている。人や時間が足りないのであれば、トラブルの潜在箇所だけでも重点的にFMEAを実施する。またFMEAを使うだけでは、自分たちに都合のいいものをつくってしまう。よってFMEAの審査が必要で、具体的にはCAEや実験によって審査を行う。そして最後に審査を行って妥当性があるか否かを確かめる工程が重要である。
以上