レアメタル 2020.9.26

1.はじめに

 レアメタル(希少金属)は、個々の材料や製品への使用量は少ないが、それぞれの中では重要な特質を導き出すために不可欠な素材である。現在、国が直面しているレアメタルに関する問題点と、その対応策を述べる。

2.レアメタルの概要

 レアメタルとは、埋蔵量が少ない金属や、技術やコストの面から抽出が難しい金属の総称である。基礎材料産業からハイテク産業まで幅広く使用されている。経済産業省が指定しているレアメタルは31鉱種47元素がある。代表的なものでリチウム・ニッケル・クロム・コバルト・モリブデン・バナジウム・マンガン・白金・タングステン・インジウム等がある。全て輸入に頼っているので安定的に使っていくために、特に重要なレアメタルは国家備蓄を行っている。

3.問題点

 新興国の経済成長に伴い、需要が急速に増えている。レアメタルは特定の地域に偏在しているケースが多く、供給不安や価格の乱高下といったリスクがある。

 レアメタルを安定調達するため、注目されているのが「都市鉱山」である。大量に捨てられる使用済み家電や携帯電話など、非鉄金属やレアメタルの含有率が高い廃棄物を鉱山に見立ててこう呼んでいる。

 日本では、官民を挙げて発掘作業が続いている。しかしながら携帯電話を例にすると、携帯電話1台に含まれる金属の価格は100円ほど。金が価格の半分を占め、10種類近く含まれるレアメタルの価値は10円程度にすぎない。「レアメタルは料理におけるスパイス。なくてはらないが、数種類のレアメタルを仕分けし、個々に取り出すのは現状では難しい」といわれている。

4.対応策

 資源外交による権益確保、都市鉱山などのリサイクル推進、レアメタルの代替材料開発、国家備蓄の強化(共同調達等)が対応策として考えられる。

5.所見 

 機械設計者が貢献できる対策は、都市鉱山などのリサイクル推進の取り組みである。携帯電話にとどまらず、環境車の廃車増加に伴い廃電池も発生している。今後は、効率の高いリサイクル技術の開発が課題と言える。限られた資源を有効に利用し、持続的な社会を実現していく上で、リサイクル技術は重要である。

 そのために機械設計技術者は、製品のライフサイクルを考慮した設計を実施すべきである。具体的にはリサイクル、リユース、分解し易い構造等「環境配慮設計」を実施し、製造からリサイクルまで製品のライフサイクル全体を視野に入れて取り組むことが重要である。

以上

補足

一般にレアメタルが希少な理由は以下の点があげられている。

・地殻中の存在量が比較的少なく、採掘と精錬のコストが高い

・単体として取り出すことが技術的に困難

・金属の特性から製錬のコストが高い

 レアメタルは、用途が限られているため特定の産業でしか用いられなかったり、他の金属に代替できたり、価格高騰時には国家レベルで抑制策が打たれたりといった様々な制約から価格の高騰が抑制され、取引量が拡大しない点で希少性を保ってきた。

 レアメタルはほとんどの製造業で不可欠な素材である。半導体産業ではタングステンやモリブデン、ニッケル等が必須の素材であるし、自動車産業では白金やパラジウムなどがなければ排ガス規制をクリアできる自動車を製造できないといわれている。ただし白金を使用しない燃料電池が開発されたことから、今後白金の需要は減退するという見方もある。

産出地の偏在性

 レアメタルの産出地は、中華人民共和国・アフリカ諸国・ロシア・南北アメリカ諸国に偏在している。レアメタルの産地に関する特徴として、ほとんどのレアメタルが産出量上位3カ国で50%~90%の埋蔵量を占めている。例えば希土類元素(レア・アース)やタングステンは中国だけで90%以上の埋蔵量があり、バナジウムは南アフリカ、中国、ロシアの3か国で98%を占める。コバルトはリチウムイオン電池に不可欠な資源で、生産シェアはコンゴ民主共和国が58%を占める。これらの国の政策、経済情勢、政情不安などによって、将来さらに入手が困難になることが予想されており、安定供給やリサイクル技術の確保が求められている。

その他

比較的精錬がしやすい鉄やアルミ、銅などは「ベースメタル」、産出量が少なかったり抽出が難しかったりで希少な金属を「レアメタル」と呼んでいる。

ノートパソコン1台に含まれる貴金属の量:金0.3g/銀0.84g/銅81.6g

東京での国際スポーツ競技会で選手に贈るメダル約5千個は、約8万トンの使用済み小型家電を回収して作製された。

レアメタルのうち、ネオジウムを含む17元素は「レアアース」に分類される。

自然の金山1トンの金脈石から取れる金は約5g、1万台の携帯電話1トンから回収できる金は数百g。

日本全体で1年間に廃棄される小型家電は約65万トン、約844億円分の金属が含まれているが、回収率は1割程度。

以上