DfX 2020.5.20

1.はじめに

 上流設計を具体的に実施する考え方として、DfX(Design for X)がある。DfXは製品のライフサイクルを通して発生すると想定される諸問題を、企画、概念設計(上流設計)段階で検討することによって、詳細設計以降の製品開発後半での後戻りを極力減らす考え方である。以下に詳細を述べる。

2.概念

 DfXとは、製品開発において企画から設計に移行する際、論理的にプロジェクトの性質を解析し、それにふまえて焦点を定め、以降の開発活動に有効な個々の設計手法(DfXのX)を選択し投人計画を立てる活動、ともいえる。以下にDfXの概念を示す。

 性能検証のための設計だけでなく、製造性、組立性、保守性を考慮した設計、環境に関わる解体性、リサイクル方法を考慮した設計、さらには使いやすい、飽きがこないといった顧客要求満足度に関する項目も評価対象となる。 DfXのXは評価する項目を意味する。たとえば、製造性(Manufacturing)評価のための設計はDfM、環境(Environment)評価のための設計はDfEなどといった具合である。

DfM       Design for Manufacturability       製造性

DfT        Design for Testability          試験容易性

DfA        Design for Assembly               組立性

DfE        Design for Environment         環境適合性

DfD       Design for Disassembly          易分解性

DfR        Design for Recycling               リサイクル性

DfS        Design for Service                   保守サービス性

 つまり製品設計の上流段階において、製品の全ライフサイクルにおいて検討すべき課題を抽出し、フロントローディング設計を実現するための考え方である。Design for Xの”X”の部分に具体的な検討課題が入る。

3.DfXを具体化する手法

 製品ライフサイクル、設計プロセスとDfXを具体化するための設計手法として設計過程(細かく分類すると、概念設計・機能設計・配置設計・構造設計・製造設計)の各設計段階で、CAD、CAM、CAE、PDMといった従来型製品開発手法と、DSM、QFD、FMEA、LCAといった今まで設計とは違った目的で使用されていた手法を、DfXという1つの考え方のもと、共通的に扱うことによって大きな効果が期待できる。

4.課題

 上流設計が重要であるとの認識は直感的に理解できるが、これを実現することが容易でないことは、設計情報が上流段階では不足していることからも理解できる。概念設計段階では、設計情報の多くは設計者の頭の中に曖昧な情報として存在する。その後、設計者間の協調を通して設計は具体化し、設計の情報もポンチ絵レベルや手計算レベルのものから、3次元CAD(3 D-CAD)やCAEへと詳細化していく。 

 情報が3 D-CADやCAEレベルまで具体化すると設計も詳細検討が可能となるが、その反面、設計自由度が少なく、設計の効果が減少してしまうというジレンマが発生する。

 DfXの考え方は、設計の上流段階で製品開発の焦点を論理的に定め、それ以降の製品開発の計画を立てるものであり、上流設計の設計者の頭の中にある曖昧な情報を、できるだけ早期にかつ正確、設計者間で共有可能な情報に置き換える作業であるということもできる。

5.まとめ

 よりよい設計解を効率的に求めるためには、上流設計段階で多面的に検討することが重要であり、DfXはこれを具現化する一つの考え方である。DfXは手法群からなり、対象に応じて適宜組み合わせて適用する点が重要であるといえる。

以上