安全な製品つくり 2020.5.10

1.はじめに
製品安全に対する社会的な意識の高まりや重大製品事故報告、公表制度の開始などを背景に製品の安全・安心に対する企業の取り組みが強く求められている。安全な製品づくりについて、設計者が行うべきことについて述べる。設計者は製品を世に出す前に、下記のような検討を行ってより安全な製品づくりを行うことが重要である。
2.リスクアセスメントの実施
製品の納入、据え付け、試運転、生産運転、廃棄全ての工程において、考えられる危険要因(ハザード)を全て書き出し、特定する。次にそのリスクが顕在化した場合の被害規模と発生確率を推定していく。リスクの評価の結果に基づき、リスク保有、リスク低減、リスク回避、リスク移転するのかを決定する。
全てのリスクに対して万全の対策を講じることは、現実的に不可能である。そのリスクは必ず取り除かなければならないのか、もしくは、リスクがあったとしても、それを使用者に知らせる事で対応可能なのかを一般常識と世の中の安全に対する認識を考慮した上で決めていかなければならない。つまり社会的受容可能なリスクか見極めることが大切である。
順序的には、本質的安全設計によるリスクの低減、安全防護によるリスクの低減をしたのち、社会的受容可能なリスクであれば、使用上の情報開示によりリスクの低減を図る。具体的には、ある製品に危険源があったとしても、取扱説明書の中にそのリスクを明示し、製品に警告シール等を貼り、使用者にリスクを伝えるという方法で、リスク度合いを見極め管理することが重要である。
3.装置の「フールプルーフ化」と「フェイルセーフ化」
人が誤って不敵切な操作を行っても危険を生じない、あるいは、正常な動作を妨害されないようにするフールプルーフや、装置やシステムにおいて故障や誤動作によるトラブルが発生することをあらかじめ想定し、起こった際には致命的な事故や損害につながらないように検討する、フェイルセーフを取り入れた設計を行わなければならない。
フールプルーフの具体的な製品の例では、正しい向きにしか入らない電池ボックス、ドアを閉めなと動かない電子レンジ、蓋を開けると自動的に止まる脱水機などがある。
フェイルセーフの具体的な製品の例では、踏切遮断機は停電や故障した場合でも、重力により自ら遮断機竿が降りてくる機構により踏切内への侵入を防止することができる。また転倒すると自動的に消化する石油ストーブなどがある。
4.問題が生じた際の対応
重大製品事故を起こした企業は、その責任を負うことになる。現在はその対応を誤ると、その企業の存命に係わる事もあり得る。つまり責任逃れを企らもうとしたり、ごまかそうとしたりすると、その情報は、メディア等によって消費者に伝わり、製品が売れなくなってしまうからである。そのようにならないよう企業としてリスクマネジメントを行う事が重要であり、事故をおこした際にも、その原因の調査、対応策の実施を迅速に行うシステムが必要である。設計者として出来る事は、問題が起こった際の原因の調査と対応策を考えることである。設計に問題があった場合は特にそうである。
5.所見
安全に関する設計者の行うべき行動を述べたが、問題が生じた際の設計者が取るべき行動については、倫理的に正しい判断、そして正しい対処ができる高度な知識、技能、倫理観をもった設計者が一人でも多く存在しなくてはならないと考える。
以上