3Dプリンタ 2020.5.9

はじめに

 3Dプリンタは別名「積層造形装置」ともいわれ、コンピュータ上で作った3Dデータを設計図として、その断面形状を1層ごとに材料を積層して立体物を造形する。積層する原理にはいくつかの方式があるが、基本的な動作の原理は同じで1回に数十μm~100μm(0.1μmm)程度の断面形状を形成し(これが1層になる)、これを積み上げていくことで少しずつ立体を造形するというものである。1層の厚さが薄いほど精密に仕上がるが、そのぶん作成までの時間がかかる。なお、その方式ごとに使える材料や造形物の特性は異なる。ここでは、以下の4つの方式についてその概要を説明する。

1.熱溶解積層方式(FDM方式)

 熱溶解積層方式は、熱に溶ける樹脂を1層ずつ積層して立体にする方法である。熱可塑性樹脂の材料を造形ヘッド内のプーリで押し出し、その先のヒータで樹脂を溶解熱で溶かして糸状の融解液にし、プリンタヘッドで押し出しながら少しずつ断面を積み上げて固化して造形する。材料としてはABS樹脂、ポリカーボネートなど熱可塑性のさまざまなものが使用できる。低価格で販売されている個人ユーザー用のモデルの多くがこの方式である。デメリットとしては、精度がやや粗く、造形時の各層間の断層が目立ちやすい(表面がざらざらする)ことが挙げられる。

2.インクジェット方式

 材料をインクジェットのノズルから微細粒子にして噴射して積層して造形する。紙を印刷するインクジェットプリンタの原理を応用して、プリンタヘッドからインクの代わりに樹脂などの材料を吐出することで、立体物を造形する方法である。特徴は熱溶解積層方式よりも表面が滑らかになる。また、インクジェットプリンタのカラーインクを使用して、力ラー造形物も作成できる。

3.光造形方式

 光造形方式は、紫外線の照射により硬化する液体樹脂を用いた造形法である。3Dプリンタの中で最も歴史の古い方式である。液体の光硬化樹脂を満たした槽に、紫外線レーザを部品の断面形状の部分に選択的に照射して、液体樹脂が硬化してできた層を多数積層して立体の造形物を作る技術である。レーザで断面が露光されて硬化した層が、順番に重ねられる作業が繰り返されて、立体の造形物が形成される。メリットは、複雑で細かな形状でも容易に成形できることである。デメリットは装置が高価で、使用できる素材が限られていることである。

4.粉末焼結積層方式

 粉末にした材料に高出力のレーザ光を当てて焼結させて造形する。レーザで焼結するので高精度で強度は出るが、表面はざらついた感じになる。金属では粉末積層造形法が主流になっている。原理は素材粉末を層状に敷き詰めて、高出力のレーザ光で直接焼結し、順次積層して立体の造形物を作成する。金属粉末にレーザ光を照射して照射されたところだけが溶けて固まる仕組みになっている。材料としては、鋼・ニッケル・チタンなどの金属系材料などが利用できる。なお金属3Dプリンクで作っても強度が弱いということはなく、通常の金属と同様に使用できる。どんな金属でも使えるわけでないが、しっかりとした金属形状が出来上がる。

                                    以上