CAE(Computer Aided Engineering) 2020.5.7

1.はじめに

 ハードウエアとソフトの高機能性、低価格化によって、三次元CADの普及が進んでいる。そのため、三次元モデルによるコンピューターシミュレーションを用いた解析がし易くなっており、解析結果も従来までと比べて信頼性が高くなっている。これらのように、CAEによる解析の精度がよくなり活用する機会が増える一方、それを利用する場合には十分に注意しなければならない点がある。以下にCAEに関する課題を2つ挙げ、その課題から1つを選び、それを解決するための具体的提案を述べ、さらに、その具体的提案により生じ得るリスクについて説明し、その対処方法を述べる。

2.CAEの利用に関する課題

 CAEの利用に関する課題としては、「解析のモデル化と条件付けをどうするのか」と「解析によって得られた解析値が妥当かどうか」が挙げられる。

前半ついては、できるだけ正確な解析結果を得るためには、いかに実物に近いモデルで解析するかが重要である。しかしモデルが複雑になりすぎると、解析に時間がかかり誤った解析値を算出することがある。いかに実物に近くシンプルなモデルを作成するかが大切である。

後半については、解析によって得られた値は、あくまでもシミュレーションによるものなので、本当に妥当な値かどうかははっきりしない。そのため解析によって得られた値が本当に信用できる値なのか見極める必要がある。解析結果をすべて信用してそれだけを頼りに設計を進めることは、リスクが大きいといえる。

3.課題を解決する具体的な提案

「解析のモデル化と条件付けをどうするか」という課題を解決するための具体的な提案を以下に述べる。

実際に解析したいものの形状は複雑で、使用方法、使用環境、材質なども単純でないことが多いといえる。そのため、いかに正確な結果が出るように形状にモデル化して、実使用にあった条件付けができるかが非常に重要になる。

微細な穴、微細な突起物、刻印、詳細形状など、実際に解析をするうえで必要ではないと思われる箇所は削除し、解析しやすいように変更する。また、解析するためにはさまざまな条件付けをする必要があるが、これらを適切に行うには、専門的な知識と経験が必要になるため、可能な限り専門家の意見を聞きながら行う。

4.生じるリスクと対処法

 CAEによる解析はあくまでも机上のシミュレーションになるので、実機での評価と全く同じ結果が得られるとはいえない。これは大きなリスクといえる。その対処法としては、以下の3つが考えられる。

・同様な実績がある解析結果と比較して想定する。

・解析結果を盛り込んだ内容で修正を行い、実機を試作して確認する。

・解析の専門家に依頼する。

5.おわりに

 解析技術が飛躍的に進歩したとはいえ、まだまだ解析結果だけですべてを把握できるとはいえない。そのため、モデル化や条件付けについては、実績や経験をデータベース化し、それを活用することなどが考えられる。

 また近年3Dプリンターが進歩していて、手軽にモデリングすることが可能になっている。この技術を上手に利用することで、CAEによる解析結果の精度も向上するといえる。さらに使用する材料を工夫することで、環境性向上など省エネルギー化も実現できる。

以上

補足

CAE(Computer Aided Engineering)

 コンピュータ技術を使用してシミュレーションや数値解析を行い、製品やシステム設計の事前検討を行うこと。従来、設計の事前検討を行うためには試作品を作り、実験を行うことで性能などが検証されていたが、CAEを利用することで試作に係るコストの削減や開発リードタイムの短縮が可能となった。「関連用語」CAD/CAM、数値解析シミュレーション、有限要素法(FEM)、境界要素法(BEM)

CAEが効果を発揮するには一足飛びにはいかない

・レベル1:最終確認・客先へのアピール

・レベル2:設計解析・解析専任者、研究

・レベル3:設計者が簡単な解析

・レベル4:解析ベース・設計手法

・レベル5:設計システム構築・ロバスト設計・最適設計

CAEシミュレーション、ラピッドプロトタイピング(3Dプリンター)技術と併せて試作回数の大幅削減、製品開発期間の短縮

課題

・モデル化の妥当性検証・負荷条件、支持条件は理想的すぎないか・要素分割と解析精度、解析結果の評価はしているか・フィーチャー抑制によって大切な穴や段、フィレットを無視していないか・知識・経験不足から結果を鵜呑みにしていないか・基礎理論による検討は実施したか・テキストの基礎式をひも解くよりCAEに頼る傾向が強くないか・初等理論による基礎的な考察を軽視する傾向が強い(なんでもはり理論による考察が適切とはいわないが)・設計パラメータの影響を理論立てて予測できるか・設計に関する基本的な知識、スキルを蓄積する努力をしているか・CAEによるシミュレーション結果を単に受け入れるのみで、どの条件が制約、限界となって目的とする所望の性能、パフォーマンスが現状止まりなのかを考察することを疎かにしていないか・失敗も含めたパラメータサーベイの結果、得られた設計の経験、ノウハウが技術者に蓄積され難いデータマイニングの手法によって知識を抽出し、製品系列設計に生かせているか

以上