FMEAとFTA 2020.5.4

1.はじめに

 FMEAとは「Failure Mode and Effects Analysis」の頭文字からとったもので、故障モードの影響を解析するという意味である。故障モードの「故障」とは、失敗、不履行、断線、短絡、折損、摩耗、特性の劣化を意味し、故障モードの「モード」とは、方法、方式、様式、形態などを意味する。

 一方、FTA「Fault Tree Analysis」は、事故・トラブル等をトップ事象として取り上げ、これに影響する故障状態の関連を明らかにして解析する手法である。

2つの違いについて述べる。

2.FMEAとFTAの違い

 FMEAは本来、製品やシステムの信頼性や安全性を評価し分析する手法である。故障モードといわれる故障や不具合を事前に予測し、質の向上・安全性の向上を目指すものである。FTAとの違いは、FTAが事後的に原因を分析する手法であるのに対して、FMEAは事前に起きる可能性のある故障や不具合を予測して対応することにある。FTAが望ましくない事象から分析するトップダウンの分析であることに対して、FMEAはボトムアップで、起きる可能性のある望ましくない事象を事前に予測する手法のことである。

3.まとめ

 FMEAは事故の未然防止に有効な手法である。事後的に分析を行うトップダウンの手法とは違い、ボトムアップで分析を行う手法でもある。起こる可能性のある不具合を予測して事前に対策を実施するという、ある意味ではとても難しいものでもある。

 そのため、FMEAを行う場合には、当該業務に熟練し精通したメンバーの参加が極めて重要である。起こりうる不具合を予測しシーンとして思い浮かべ、シナリオとして思考する能力が求められるからである。それだけにFMEAを行った経験と同時に、業務に精通した経験も問われる。FMEAはトップダウンで望ましくない事象から原因まで遡る分析ではない。しかし、わりと多くみられる間違いが、分析の始点を不具合やエラーから出発しているケースである。それはFMEAと似て非なるものである。FMEAは予測されるものだけでなく、予測が困難なものからも不具合モードを抽出し列挙するものである。始点となるのは望ましくない事象ではなく、望ましくない事象に至る可能性のあるモードが要点である。

以上

補足

・FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)

製品・システムの構成要素から取り上げて、製品・システム全体に与える影響を調べる解析方法である。設計段階で考えられる製品・システムに潜在する故障モードを抽出しその故障モード(破損、断線、短絡、摩耗等)を解析して製品・システムに及ぼす影響を明らかにし致命的な影響を与える故障を識別するシステム安全工学手法である。

[関連用語]ボトムアップ手法、故障モード、信頼設計、FTA

・FTA(Fault Tree Analysis)

絶対に起こってはならぬ事故・トラブル等をトップ事象として取り上げ、これに影響する故障状態をこれらの関連が明らかになるように論理記号を用いて書き下しトップ事象から原因となる事象とその事象に対する防御手段の検討について、階層的にフォールドツリーを作成して実施する解析手法である。

[関連用語]トップダウン手法、HAZOP、信頼性設計、FMEA

以上