安全の確保と限界 2020.5.3

1.はじめに

 安全は何事にも優先するものであり、製品のライフサイクルを通して人に危害を与えるようなものとなってはいけない。重大事故となるものについては、発火・爆発・落下・挟まれ・エッジなどによる裂傷などさまざまなものがある。設計時点で、その問題を事前に予測し解決する必要がある。ただ製品によっては、定期的な保全を行わないと安全を確保できないものもある。またインターロック機能を用いて、問題が発生した時にでも暴走して人体に被害が起こらないようにする方法を用いることもある。機械設計の技術者としてどのように安全を確保していくのかについて述べたうえで、その限界についても記載する。

安全を確保する設計手法として下記の方法がある。

2.故障モード影響解析(FMEA)の実施

 FMEAとはシステムの構成要素から分析を行い、スシテム全体に与える影響を調べる帰納的解析方法である。システムの設計段階で考えられる問題を抽出し、致命的となる故障を識別し対策を行う。具体的にはシートを作る。「部品」ごとに「機能」「故障モード」「推定原因」「故障の影響」「故障の検出方法」を全て書き出し「発生頻度」「危険度」を数値化し、優先順位をつけて対策を行う。

3. フォルトツリー解析(FTA)の実施

 FTAとは、爆発、落下などの問題となることを頂上現象として、そこにたどり着く過程での発生確率を集計する手法である。その事象が起こる確率に最も影響している箇所を特定することができる。その部分について対策を施し、頂上事象に発生確率を低減する。

4. デジタルエンジニアリングの活用3Dプリンター

 複雑な組み合わせや内部構造の状況などを確認することができ、安全のための部品間のクリアランスなどを確認することが可能となる。また弱い形状などを探すことにも活用できる。3Dプリンターの技術を用いれば、複雑な形状の試作品でも作ることが可能となり、より現実に近い状態で検証することが可能となる。

5. デジタルエンジニアリングの活用:CAE

 強度や応力などを視覚的に確認することが可能となり、弱い部分などを発見することができる。検証試験などで、可視化が難しい部分においてもシミュレーションすることができるため危険部位を探すのに威力を発揮する。また解析データをもとにばらつきをみながらロバスト設計を行うことも可能となる。

6.失敗事例の分析

 過去の失敗事例などの分析も重要なアイテムとなる。過去において行った検証では不十分であり、問題が発生した可能性が高い。その部分について、発生を防止する対策が必要である。ナレッジマネジメントを活用し、各設計の注意点、対応策をまとめ、必要な情報が容易に確認できるシステム作りも重要である。そのデータをもとに過去のトラブルの再発を防止する。

7.デザインレビュー

 有識者によるデザインレビューも重要である。設計者の思い込みなどにより、問題点を見落としている可能性がある。デザインレビューにて多角的な目で確認を行い、安全であることの最終確認を行う。

8.安全確保の限界について

 上記で述べたようなことで安全の度合いを高めていくことは可能であるが、完全にゼロにすることは困難である。冗長系を増やすにも限界があり、製品コストとのトレードオフにもなる。また設計段階で問題とならなくても材料のばらつきや製造での不具合、製品の使用環境、使用者の使用方法などさまざまなバイアスが絡み合って問題を起こすことがある。

9.所見

 機械設計者として安全確保の限界があることを認識したうえで最悪の場合において人的被害が生じないようにする必要がある。技術者はその問題を見抜く技術が必要であり、広い知識と設計力をもって対応していかなければならない。

以上