ISO12100 2020.5.1

1. 機械の安全設計に対する基本的な考え方

 国際安全規格(ISO12100)では、リスク低減のための方法論として包括的なリスク低減戦略が述べられている。これは、3ステップメソッドと呼ばれており、

1.本質的安全設計によるリスクの低減

2.安全防護によるリスクの低減

3.使用上の情報開示によるリスクの低減

の順番で行うことが明記されている。本質安全設計のポイントは、起こったことへの対応、つまり「事後対策」ではなく、起こりえる事への対応、つまり「方策」であると言える。

2.本質的安全設計によるリスクの低減

 本質的安全設計とは、安全を設計の段階から考慮することであり、最も本質的な安全の確保の方法がある。それには危険源が存在しないように設計する、または危険源が存在してもそれによる危害の度合が小さくなるように設計することである。具体的には、装置の「フールプルーフ化」と「フェイルセーフ化」が必要になる。

3.フールプルーフ

 フールプルーフは人間が誤って不適切な操作を行っても危険を生じない、あるいは正常な動作を妨害されないようにすることである。そのために、さまざまな状況でどのような誤りを犯す可能性があるかを考えることが必要となる。“安全インターロック”はこの特性を現実するためのものであると考えられる。

 身近な例を挙げると、正しい向きにしか入らない電池ボックス、ドアを閉めないと動かない電子レンジ、蓋を開けると自動的に止まる脱水機などがある。ユーザーは使い方を理解していない状態で操作し、熟知している場合でも集中力が低下すれば操作を誤ってしまう。そういった場合でも安全性が確保できるように事前に対策を実施することが重要である。

4.フェイルセーフ

 フェイルセーフは、装置やシステムにおいて故障や誤動作によるトラブルが発生することをあらかじめ想定し、起こった際には致命的な事故や損害につながらないように設計するという考え方である。これは「装置やシステムは必ず故障する」「ユーザーは作業ミスをするものだ」ということを大前提にした設計思想である。

 身近な例を挙げると、踏切遮断機は停電や故障した場合でも重力により自ら遮断機竿が降りてくる機構により踏切内への進入を防止することができる。また転倒すると自動的に消火する石油ストーブなどがある。

5.まとめ

 安全を重視した設計は、装置の使いやすさとトレードオフの関係にある。装置を設計する際には安全に対する重要性を常に意識しながら、使う人の立場で使い勝手の良い装置設計を心がける必要がある。また機器の設計だけでなく、マニュアルの作成や試運転などの際にも同様な配慮をしていく必要がある。

以上

補足

フールプルーフ

 例としてオートマ自動車でブレーキを踏みこまないとシフトレバーをパーキングから動かすことができない、などである。

フェイルセーフ

 エラーが起こってもエラーによる被害の拡大を防ぎ、エラー前の状態に回復できるようにするエラー対処である。機械が壊れても危険にならない仕組みとも言える。製品、機械、システムにおいて故障や誤動作によるトラブルが発生することをあらかじめ想定し、起こった際には致命的な事故や損害につながらないように設計するという考え方である。

 例としてジャンボ機4つのエンジン仮に3つのエンジンが止まったとしても1つのエンジンだけで最低限の飛行ができる、などである。

IS0 12100

 国際規格IS0 12100を基本とする機械安全の体系で最大の特徴といえるのは、安全に関して設計者の責任を優先するとともに、設計者によって達成できる安全の限界を明確にしている点である。安全な機械の設計を強く要求し、その結果を受けて事業者は例えば労働安全マネージメントシステムの中で、機械になお残る危険性に対して、PDCA(Plan/Do/Check/Action)を採用するなど、安全作業を計画し教育訓練を実施することなどが求められる。

 1S012100は、機械装置における安全構築のルールを定める規格である。機械装置はこの規格に沿って安全対策を施すことが不可欠で、信頼できる安全を構築することが求められ、その責任は製造者が負うものである。他方、機械装置の使用者は、本規格の考え方を遵守して機械装置の管理にあたることが要求される。

以上