自分だけの刃を研ぎ澄ます 2016.11.28

 今朝は、「自分だけの刃を研ぎ澄ます」という題でお話しをしたいと思います。日銀がマイナス金利の金融政策を取っていますが、一般の銀行においても、金利は0近くで推移しています。

今銀行にお金を預けても、定期預金の金利は0.01%です。私が入社した頃は確か5%ぐらいあったと記憶しています。

今思えば5%というのは、信じられない数値ですよね。例えば100万円を利息5%の定期預金で預けていたら15年で倍の200万になります。

現在の定期預金金利は先程も言いましたように0.01%です。100万円を倍の200万円にするためには、7200年も銀行にお金を預けなくてはなりません。

金利の大小はひとまず脇に置いておいて、これからお話する内容をわかりやすくするために金利を年5%としてお話しします。

預金金利を年5%として、1億円を銀行に預けると500万円の利息がもらえます。これを逆に言うと、500万円の利息は1億円の資産から生じると言えます。

今私達が働いて1年間に500万円の収入を得ていたと仮定します。「無」から「有」が生まれないとすれば、この500万円もまた1億円の銀行預金に匹敵する何らかの資産から生じているはずです。

この資産、すなわち労働から利益を生み出す個人の能力が人的資本です。ある意味、わずかな貯金を殖やそうと苦心惨憺するよりも、大きな富を生む人的資本にこそ投資すべきだ。という考え方があります。

資格を取得したり、語学学校に通ったり、これも「自分への投資」と言います。しかしながら、こうした投資は往々にして無駄に終わることが多いようです。

そもそも、資格や能力に価値があるのはそれが希少だからで、片言の英語が話せるからといって収入が増えるわけではありません。弁護士が高給を得られるのは需要に対して人数が少ないからです。ではどうすれば良いか。

それは、「自分の得意分野」で「頑張る」のが最も効率が良く、最善の方法であるという事です。これは個人だけではなく、企業でも国家にも言える事です。

個人の優位性を「エッジ(刃)」と言います。漢字で書くと「かたな・は」です。誰もが自分のエッジを持っています。

人的資本への投資とは、試験で良い点を取ったり資格の数を増やしたりすることではなく、自分だけの刃を研ぎ澄ますことだと言えます。

関連した話しをもう一つ。ある外資系のマネージャーの体験談が書かれた文章があったので紹介します。

このマネージャー、仮にA氏とします。A氏は東大を卒業後、アメリカの名門大学でMBAを取得し、30代で外資系大手メーカーの管理部門のトップになった絵に描いたようなビジネス・エリートです。

A氏は、一年ほど前に病気のため退職して療養生活を送った後、ヘッドハンターの紹介で、ある中堅企業の経営再建を託されました。

その中堅企業は、もともと日系企業の一部門で、事業リストラで外資に売却されたものの業績不振のため、存続の瀬戸際に立たされていました。

入社初日からA氏は職場を覆う異様な雰囲気に圧倒されました。A氏に話しかける者は社内に誰もおらず、オフィスに顔を出すだけで、部屋中が凍りついたような状態になったそうです。

A氏の行動は監視され、報告され、些細な発言が非難の的となりました。業績悪化に歯止めをかけるには人員整理が避けられないことは、誰もが知っていました。その尖兵であるA氏に敵意や反感が集まるのも無理はないことですが、そこには、A氏の存在を抹殺しようとする、悪意がありました。

この会社でA氏が出会ったのは、リストラされれば生きていけない、追い詰められた人々でした。

やがて、深夜にA氏の自宅にいたずら電話が頻繁にかかるようになり、社内には、彼を誹謗中傷する匿名のeメールが流されました。

二ヶ月後、A氏は辞表を提出したそうです。A氏いわく、執拗な嫌がらせに屈したためでも、汚れ役が意に沿わなかったためでもない。「正義が相手側にあったから」だと言います。

会社を辞めてもA氏は生活に困るわけではありません。転職は数ある人生の選択肢の一つでしかない。それに対し、彼の前に立ちはだかったのは、たたったひとつの選択肢しか残されていない人々でした。

ならば、道を譲るべきは自分だろうと、A氏は考えたそうです。A氏の判断が正しいかどうか、私にはわかりません。A氏が身を引いたからといって、問題が解決するわけではありません。

ただ感じるのは、生きていくために選択肢は多いほうが良いなということです。

最後になりますが、今日の話しをまとめますと、

「利息」を増やすためには「資本」を増やすのが効果的

「人的資本に投資する」つまり「自己投資」が重要

「投資するのは自分にとって優位性のある分野」

「そこで自分“だけ”の刃を研ぎ澄ます」

「そうすれば人生の選択肢が増えるかもしれない」

という話しでした。

さあ、今週も張り切って一週間を過ごしましょう。

ご清聴ありがとうございました。以上です。