詐欺に引っかかった話 2015.3.9

 ちょっと前、と言っても1~2年ほど前の話ですけど、詐欺にあってしまいました。恥ずかしいのであまり言いたくはないのですが、ここだけの話として聞いてください。

実は例のペテン師、佐村河内(さむらごうち)のCD「交響曲第一番ヒロシマ」を私は買ってしまいました。

一連の騒動の経緯を簡単に説明しますと、当時、佐村河内は、聴覚障害、つまり耳が聞こえないという障害をもち、広島生まれの被爆二世で様々な発作とも闘いながら数々のクラック曲を生み出す天才作曲家で、「現代のベートーヴェン」というキャッチフレーズで紹介されていた人物でした。

私が買ったこのCD、数千枚売れれば上々と言われたクラッシック界にあって異例の18万枚のセールスを記録したそうです。

しかしながら後になって佐村河内は、耳は聴こえるし作曲もしていない。実はゴーストライターがいて、そのゴーストライターがすべての曲を作曲していた事が週刊誌で暴露され、そのゴーストライターと佐村河内が別々に会見を開いて謝罪をした、という騒動です。

私は考えました。「何故、騙されたのか?」一番の理由はNHKのドキュメンタリー番組、いわゆるNHKスペシャルを見て、それをそのまま信じてしまったことです。

このNHKのドキュメンタリー番組、「魂の旋律~音を失った作曲家」とう題で放送されました。番組の冒頭で「交響曲第一番ヒロシマ」が大きな劇場で演奏された直後の映像が映り、満員の観客が拍手喝さいの中、杖をついた佐村河内がステージに向かうシーンから始まっていました。

ナレーションは、「鳴りやまないスタンディング・オベーション、迎えられたのは作曲家、佐村河内。しかしその賞賛の声は彼には届かない。両耳の聴力が全くないのだ」とアナウンスされていました。

「耳が聞こえないのに、どのような曲を作るのか」、また「それほど多くの人が絶賛する曲とはどんなものか」と、興味を持ったのでCDを買ってしまったわけです。

民放ならスポンサーがいるので、何かしらバイアスがかかっても仕方ないかもしれませんが、「NHK、国民から受信料集めといてなんだよ。ちゃんと取材したのかよ!」と憤りました。

後にNHKも何らかの形で謝罪したようですが、「自分たちも騙された」とのスタンスに聞こえて、佐村河内より私はNHKに対して腹がたったのを記憶しています。もちろん騙された自分にも腹が立ちましたが。

ちょっと話は飛びますが、今回の騒動でゴーストライターの存在がクローズアップされました。しかしながら世の中にはゴーストライターが暗黙の了解で存在していることは皆さん、ご存知のとおりです。

実業家やスポーツ選手、芸能人の著作本の多くはゴーストライターの存在があり、編集者だけでなく読者も、半ば公然の秘密として納得しています。

例を挙げると、とあるベストセラーをもつ大学教授が、別の高名な教授に対して、こう言ったそうです。「君の本が売れないのは自分で書いているからだよ」と。

この教授の作品は、講演などを元に優秀な編集者が構成執筆しており、業界では周知の事実だそうです。

ゴースト・ライティングは、もはや出版界のビジネスモデルの一つになっているそうです。

ではなぜ今回、ゴーストライターが問題になったか。それは出版の分野で言えば、「作家」を名乗る人には、間違ってもゴーストライターは存在しないです。

作家以外の人の一部には文章を書く時間がないから、もしくはゴーストライターに依頼したほうが、文章が上手なので、より意図が伝わるから等、いろいろ理由はあるかもしれませんが、ゴーストライターが書いているのに、さも本人が書いたような形で出版している本があるわけです。

一方「作家」は、勝手に誰かが、自分の文章に手を入れられたら怒るでしょう。自分の文章、作品でなくなってしまうからです。

今回の問題は、「作家」と同様、「作曲家」を名乗る人の後ろに「もう一人作曲家」がいたという事が問題視されたわけです。

例えると、作曲家・誰々、プロデューサー佐村河内であれば問題なかったといえます。しかし素人目には、わかりにくいですね。出版、放送、音楽業界の一部には「売れたら勝ち」のような考えが根底にあるのかもしれません。消費者はそのへんを見極める目が今後より必要になってくると思います。

最後になりますが、私たちの周りには常にいろんな情報が溢れています。その中から自分にとって有用な情報を取り入れていくわけですが、今回の私の例でいえば、「NHKが放送していたから」、という理由で信じ込んでしまいました。思考停止になってしまい、自分の感性で物事の判断できなかったと言えます。

世の中には、同じくNHKのドキュメンタリーを見て、旦那と奥さんの意見が分かれ、旦那が違和感を持ち「こいつはそんなタマじゃない、ニセモノだ!」と言ったのに対し奥さんは「ひどい、どうしてあなたは、そう疑い深いの!」と口喧嘩になった例もあるようです。

つまりちゃんと見破っていた人もいたわけで、その点、自分はまだまだだなと思ったわけです。

今回は、あまり仕事とは関係無い話をしましたが、まとめると何か権威的な情報(今回の場合で言えばNHKですが)に対して、思考停止にならない事。

常に自分の頭で考え、行動しないとだまされる事がありますよ、という事が言いたかったので、敢えて自分の恥をさらして、発表しました。

以上です。ご清聴ありがとうございました。