百聞は一見に如かずJAXAの取り組み 2014.9.22

この夏7月から9月、ちょうど明日までの期間、幕張メッセで宇宙博が行われています。ご存知の方もいらっしゃると思います。私の小学2年の長女が夏休みでしたので、せがまれて宇宙博に行ってきました。というのは嘘で、ただ単に私が見に行きたかったというのが実情で、あまりノリ気のない娘をなだめて見学に行ってきました。
予定では夏休みに行くつもりでしたが、この宇宙博、ものすごく混んでいるという事を知り、夏休みの8月を外して9月に行ったのですが、それでも混んでいました。
この展示会はアメリカ航空宇宙局(NASA)と、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で展示しています。
目玉展示の一つは火星探査機である「キュリオシティー」です。火星表面の土や岩石を採取します。蜘蛛のように脚が外に出っ張っていて、車輪が6つ付いています。
この「キュリオシティー」おもちゃほどの大きさを想像していましたが、とんでもない、長さ3m重さ1トンほどあって自動車ぐらいの大きさです。このキュリオシティーの実物大のモデル機が展示されていました。よくこんなデカイ装置を火星まで運んで、また壊さずに着陸させるものだと感心して見ていました。
他にも、国際宇宙ステーション「きぼう」の日本実験棟の実物大モデルが展示されていて内部が見学できるのですが、長蛇の行列ができていて、子供を連れて並ぶのが億劫になり「きぼう」の他にも人気展示ブース3つは見ることを諦めました。
私が見た中で一番興味を引いた展示物は、海底から引き上げられた国産ロケットのエンジンまわりの残骸です。正確には打ち上げに失敗したH2ロケット8号機の残骸が一番興味を引きました。

ロケットが墜落したのは、燃料の液体水素を通す配管を90度曲げて設置していたので、ロケット打ち上げ直後発生したキャビテーションが原因で水素ポンプの停止に至り墜落したという経緯があります。
墜落の原因を順に説明すると、
・液体水素ポンプが42000rpmで回転
・液体水素ポンプに旋回キャビテーションが発生
・気泡破壊によりチタン合金羽根表面に圧力振動が発生
・気泡が逆流してポンプ前の整流板を振動
・液体水素の流れが振動
・ポンプの羽車が共振
・許容値以上の繰り返し荷重が掛かりポンプの羽根が疲労破壊
・ポンプが壊れてロケットが制御できなくなって破壊命令出して墜落
これ以上説明すると寝てしまう人が続出するのでやめますが、ざっくり言ってしまうと、90度折れ曲がった無理のある配管のせいで、液体燃料中に泡が発生し、その泡が破裂したときに生じる大きな圧力の波が部品を振動させ、ポンプの羽根車を壊したという事です。
これらのロケットが墜落した原因がはっきりしたのは、小笠原北西380kmに墜落したロケットを海底3000mから回収し、その部品を分析して判ったそうです。
このロケットの残骸展示ブースに今説明したような原因等、細かな事は記載されていないのですが、説明員としてJAXAの技術者の方が参加されていたのと、他のブースのように混んでなかったので、その技術者の方にいろいろ質問ができたのが幸いでした。
ここでやっと後ろの白板に書きました「百聞は一見に如かず」になるのですが、「百聞は一見に如かず」とは百回聞くよりも、たった一度でも自分の目で見たほうが確かだという意味です。
私達は粉砕機や乾燥機などの化学装置を製作、販売していますが、中には所定の能力がでなかったり、部品が壊れたり、オイルが漏れたり、振動があったり、と問題が発生する事があります。
問題の原因を突き止めるために、いろいろ原因を考えて可能性のある事項を確認したり推定したりします。
常に実際の物が見られるわけではないですし、現物を見たからといって必ず問題の原因が見つかるとは限りませんが、もし実物が見られ状況にあるのであれば、真の原因を追求するために、頭の中だけで「ああでもない、こうでもない」と想像しているよりは、現場に行き現物を見て、触って、音を聞いて、匂いを嗅いで、五感を総動員するのが原因追求の早道です。
JAXAの技術説明員の方に「3000mの海底からロケットの部品を引き上げるには、相当な苦労があり費用もかかったと想像しますが、本当に引き上げなければ墜落の原因がわからなかったのですか」と質問しました。
技術説明員の方は、「これらロケットの部品を引き上げなくても、いつかは判ったかもしれません。でもロケットの部品を引き上げ、問題があると推定した部品を観察、分析したことで、問題の原因がはっきり判り、原因究明に費やす時間が大幅に短縮できました。また次のロケット打ち上げに対する有効な対策が打て、結局は時間と費用のロスを減らせました」とおっしゃっいました。
なかなか説得力のある回答で参考になりました。
ということで、本日の朝礼は、真の原因を追求するため、海底から部品を引き上げてでも問題の原因を突き止めたJAXAの取り組みを紹介し、いかに実物、現物を見るという事が大切かという話をしました。
それでは、今週も張り切って一週間を過ごしましょう。と言いたいところですが、明日は休みなので、今日一日頑張って、また水曜日から張り切って過ごしましょう。以上です。