ヤマト運輸と動物戦争 2017.5.8

皆さん、ゴールデンウイークはしっかりと休めましたでしょうか。私は家族とバーベキューをしたり、遊園地に行ったりして過ごしました。天気にも恵まれ、皆さんも充実した休みが取れたのではないでしょうか。
さて今日は、後ろの白板に書きました「宅急便」の話をします。最近、新聞やニュースで取り上げられているヤマト運輸のお話です。
何が話題になっているか簡単に言ってしまうと、アマゾン等、ネット通販の荷物取扱数の急増と、深刻な人手不足で現状のサービスの維持が困難になった、という事です。
ちなみに、「宅急便」という言い方は、ヤマト運輸における宅配便の商標登録なので、一般名称は「宅配便」になります。
この「宅配便」、とにかく消費者にとっては便利なサービスです。私が子供の頃の話ですが、鹿児島に住んでいた祖父母が栽培したメロンを、毎年夏に10個ほど滋賀県の自宅に送ってくれていました。
当時は、国鉄の貨物を利用していました。国鉄というのは、今のJRが民営化される前の名称です。荷物が届いて中を確認すると、輸送中の振動と衝撃でメロンが割れており、原型を留めているのは12個中、2個か3個だけでした。
祖父母はそれを見越して、荒縄等を使用して相当頑丈に荷造りをしていましたが、毎年同じような損傷率でした。
そもそも、個人で荷物を送るということは、日数もかかります、到着予定もわかりません、荷造りは頑丈にしないといけません。また、ある程度、荷物を雑に扱われても昔はそれが普通だと思っていました。
今では、一般的になった宅急便のサービス、ヤマト運輸は最初からやっていたわけではなく、創業時は一般の運送業と同じく法人を相手に商売していまいた。
約40年前 、社長の小倉昌男氏が、電話1本で1個でも集荷すると打ち出し、個人宅を対象に荷物を届けるサービスを開始したのが始まりです。
当時はいろいろ苦労があったようですが、ある程度ビジネスが軌道に乗ると、他社が参入してきたようです。
競合他社はヤマト運輸の「クロネコヤマトの宅急便」というコマーシャルが成功のカギだと考え、犬、子熊、ライオン、ゾウ、キリン等、同じように動物のマークを作り宣伝を始め、多いときは35社ほど参入してきて、さしずめ動物戦争と言われたようです。
しかし、この分野で最終的に生き残ったのは数社だけで、やはりノウハウが無いと長続きしないようです。このように成長してきたヤマト運輸ですが、最初にお話した荷物取扱数の増加と、人手不足という課題に直面してしまったわけです。
ヤマト運輸が今後どのような対策を打つかというと、大きくは3点。
取扱数量の削減で、昨年より個数で8000万減らすそうです。現状年間20億個運でいるので、前年度比4%ほど減らすという事になります。
次は、採用計画で今年、正社員・契約社員・パートを1万人近く採用する計画だそうです。現在、従業員数20万人だそうです。
3つ目が運賃の引き上げ。基本運賃を27年ぶりに平均15%引き上げるようです。
他にも、時間帯指定サービスの見直し、当日配達の受託からの撤退、再配達時に手数料上乗せの検討です。この再配達、効率を悪くしている原因ですが、現状再配達の割合は、全荷物の20%にも達しているようです。
私が個人的に考えるポイントは、いかにイメージを良くして働く人を採用するかだと思います。一般的に運送業は、きつい仕事というイメージがあります。ちなみに、私は学生のとき運送会社で荷物の仕分けのアルバイトしていました。
ヤマト運送会社ではなく企業相手に荷物を運ぶ「西武運輸」でした。荷物は地区ごとに機械が自動で振り分けるのですが、それを更にドライバーが自分のトラックに乗せ易く、かつ送り先を確認し易いように荷物を小分けする仕事で、早朝2時間、期間は1年間半、日曜以外毎日、時給の高さに惹かれてやっていました。
たまにですが、ドライバーの方と一緒にトラックに乗って荷物を運んだ事がありました。200リッターのドラム缶を「ちょっと移動しておいて」と言われたのですが重すぎて指示通りできず、「この仕事は自分には無理だな」と実感した思い出があります。
でもその後、会社の実験室でドラム缶を移動させるよう指示を受けたとき、ちょっと傾けて転がしながら移動させるコツを教えてもらいました。
余談になりましたが、運送会社は、きつい仕事というイメージがあると今は、なかなか人が集まらないという点がネックになるのではと思ったわけです。
最後に、「宅急便」のサービス、たいへん便利なので、基本的に私はヤマト運輸を応援しており、問題や課題があろうと切り抜けて欲しいと思っています。
ただ一連の話を聞いていますと、ヤマト運輸一社の問題とは言えないのでは、と思い始めました。働き方、生産性、働き手の確保等、日本の企業が直面している問題を先取りしているとも言えます。
業界は異なりますが、当社も同じ問題に直面するかもしれません。受注が多すぎて今の人員や設備では足りず、泣く泣く受注を見送るとか。
転ばぬ先の杖ではないですけど、ヤマト運輸の問題解決の取り組みは、私たちにとっても参考になる部分があるのでは思った次第です。
という事で、今日はヤマト運輸の宅急便の話でした。ご清聴ありがとうございました。